「ババアの飼い実装2」 ===================================================================================================== 少し前の話。 獣装石は悩んでいた。 「デスゥ…」 残った仔実装を守るといっても、それは並のことではない。 力の強い獣装石が自分を守るだけならともかく、何匹もいる仔実装の相手はしきれない。 一箇所にまとめたとしても、やはりおつむの弱い仔実装なので残念な結果になることは目に見えている。 そうやって一人考え込んでいると、生き残った成体達が集まってきた。 「デスゥ。もうこの公園では生きていけないかもしれないデスゥ。だから渡りをするべきだと思うんデス」 公園の実装達は勝手に畑を作って実装茄子や蒼ネギ、紅トマトなどの実装野菜を栽培していた。 しかし、この前の駆除ではそれらさえも奪われてしまったのだ。 ダンボールハウスは破壊されなかったとはいえ、食べる物がなくては意味が無い。 もはや彼女達に渡りで失うものは無かったのだ。 「貴女の力があれば他の場所でも生きていけるデスゥ」 「別の公園でも糞蟲に負けることはないデスゥ」 「「「デスゥデスゥ」」」 成体達は獣装石に頼り切っているのか、やれ貴女がいれば、やれ大丈夫デスゥ、と獣装石に渡りを薦める。 「で、でも… 子供達には長い距離を渡るのは無理デス。仔が死んでしまっては意味が無いデスゥ」 この獣装石(次から獣と呼ぶ)は典型的なボス獣であった。 優しい親から生まれるも、同属から迫害され、それを庇った家族はリンチで死亡。 獣自身も覚醒前は行く先々で激しい暴力に遭い、安らげる場所もなく一匹狼として生きてきた。 しかし、ひょんなことから公園のリーダーとなりコロニーを率いることとなった。 彼女にとってはこの公園が初めての安住の地であり、ここの仔達は皆自分の娘同然であった。 「間引く… デス…」 (駆除で)数匹になってしまった成体を掻き分けて、一匹の大柄な実装が現われた。 「糞蟲性の高い仔は間引くデス… そして賢くて可愛い仔だけを連れて行くデス…」 彼女はこの公園の元リーダーにして、一番の古参。 普通山実装などに見られる、俗に言うところの長老石である。 「それは嫌デス! あの仔達はまだ幼いデス! まだ糞蟲と判断するには…!」 自分が幼い頃に辛い目に遭っていたために、獣は仔に甘い。 その甘さは凄まじく、ここの仔達は野良の癖に同属はお友達と思っているのである。 「貴女は仔に優しすぎるデス… 優れた個体を見分け、集中的に育てるのは実装石だけでなく、 自然に生きる生き物全ての掟デス。全員を生かそうとすれば、即ち全員が死ぬことになるデス…」 「デェ…」 長老石の指摘に返す言葉が見つからない獣。 言っていることは正しい、しかし納得できない部分がある。そんなところだ。 「貴女は心配しなくても大丈夫デス… 仔の選別は私がするデス…」 長老石の優しい言葉に少し安心する獣。 きっと私の仔達はみんな良い仔だ。平気だろう、きっと平気だろう。 そんな思いで獣は長老石に間引きの許可をした。 ・ ・ ・ 「デッス〜ン♪ 長老様ぁワタシの仔は生かして欲しいデスゥ」 「テッチューン♪」 「おやつに取って置いたコンペイトウのかけらデスゥ…」 「テチテチテッチュン♪」 「釘とネジとシャーペンデス… 護身用にどうぞデス」 「ワタシは賢いテチュ♪」 「これ、この前拾ったペットボトルデス…」 「長老様大好きテチュー♪」 「ワタシもこれを…」 獣に隠れた所で成体達はなにやら取引をしていた。 皆長老石を囲んで賄賂を渡している。 生き残った成体達は自分の仔が間引かれないように長老石に貢物をしていたのだ。 「デスゥゥゥ… これとこれは中々デスな… だけどこっちの方は駄目デス。 お前の仔は元々糞蟲だから間引き確実デスの」 長老石はコンペイトウのかけらを差し出した親実装を見捨てた。 「デギャァァァァァ!! なんでデスゥ!! ワタシのとっておきのおやつの何が気に食わないデスーー!!」 目の前に置いてあったシャーペンを取って長老石に襲い掛かる親実装。 しかし、ポンッと手を押さえられあっという間に騎上位されてしまった。 「デププププ… たかだか数年越しの若造なんかに負けないデス…」 長老石はパンツを下ろすと中から巨大な一物を晒した。 実は長老石はマラ実装だったのだ。 マラ実装は性欲まみれの馬鹿な個体が多いとされるが、反面賢い個体は非常に狡賢い。 彼がリーダーだったころはこの公園は彼のハーレムだった。 しかし、力では勝てない獣が来たために、彼はマラを隠し長老の座に着いたのだった。 犯された実装石は獣がリーダーになってから成体になった個体だったのでそのことは知らなかったようだ。 「デプゥ… デフゥ… 結構良い穴込んでぃだったデス… 久々に楽しませてもらったお礼にお前の仔は私の間食になる栄光を授けるデスよ」 マラ長老は事を終えると、マラをパンツに仕舞い長老石に戻った。 手に付いた精液をパッパッと払い、親実装の後ろに居た仔を食べた。 「テチィーーー!! テギャチベェーーー!!」 この長老には鼻からまともに仔を選別する気は無かった。 自分の性欲処理にちょうど良い仔なら賢さに関わらず選ぶ気であった。 獣は肝心なことに気付いていなかった。 この公園での彼女の立場は只の用心棒。 リーダーとは見せかけだけで、言葉巧みに長老石に利用されるだけの存在。 今回も長老石はなにかと言い訳をつけて、獣と再び来るであろう駆除隊をぶつけようとしていた。 そして事がうまく運べば、獣の力で駆除隊を支配し、 獣を傀儡に、この公園のある市を、県を、日本を、そして世界、宇宙、あらゆる次元さえ支配しようなどという途方も無い妄想を抱いていた。 「デププ… この公園を出たらあのケダモノに他の公園を襲わせるデス… なに、他の同属は糞蟲だの、同属を同属とも思わない悪魔だとか言えばアイツはころっと騙されるデスゥ」 長老石は実装の特徴である独り言を続けながら仔実装の間引きに向かった。 ・ ・ ・ 「守るデスゥ。今度こそ守るデスゥ」 獣は決意を固めていた。 かつては守れなかった姉妹と優しかった母親。 今度こそは大事な家族を守って見せると… だが、渡りの途中でまた駆除隊が襲ってくるかもしれない。油断はできない。 「あの糞蟲共… 絶対に許さないデスゥ。 今度来たら八つ裂きにして殺してやるデスゥ!!」 ・ ・ ・ ===================================================================================================== とある公園の前に実装車の隊列が並んでいた。 それは前回獣装石に大打撃を喰らった駆除業者である。 「デププ… 大丈夫デスゥ。今日は助っ人を雇っているデスゥ。 それこそあんなケダモノなんか足元にも及ばない本物の怪物デスゥ」 何やら策があるのかニタニタと笑う現場長石。 愛車のデスゥサスは新品と取り替えられていた。 ・ ・ ・ 『テチテチテチテチテチテチテチテチテチテチ…』 仔実装の声を模した電子音が鳴り響く。 人間用の豪華な部屋に、これまた大きなベッド。 ロココ調の布団の中で蠢くこれまた大きなシルエット。 「デスゥー…」 起き上がったのはいかにも特急といった感じの実装石であった。 「デッスゥ。確か今日はピンクに駆除を懇願されていたデスね」 金髪の大きなロール髪を揺らしながらトテトテとベッドの隣にある高級車ローデスロイスに乗り込む謎の実装石。 「ご主人様ー、行って来ますデスー」 謎の実装は自分の部屋を出て、大きな廊下をローデスロイスで駆けて行った。 そして、玄関あたりで行って来ますを言った。 「あらぁ、レチアンヌちゃん今日はお出かけなの? いってらっしゃいね〜」 玄関で靴を履いていた恰幅の良い中年女性は謎の実装に手を振った。 私実装すみません… 赤いサクブスでした。