俺は現在仔実装を飼っている。 無論虐待目的で。 その仔実装が最近声変わりしてきた。 「テチュ」から「テス」へ。 いわゆる中実装と呼ばれる状態だ。 すると声変わりに気づいた実装は慌てていた。 何故か? それは俺がこいつを飼う時に言った事が原因だ。 「まずいテス!このままではワタチは殺されてしまうテス!」 そう、飼う時に言った事とは「仔実装のままなら可愛がるが成体になったら殺す」というものだ。 人によっては仔実装の甲高い声が可愛いらしいので今回はそれを利用した虐待をしたのだ。 無論俺は仔実装の声など虫唾が走るほど嫌いだ。(虐待による悲鳴は好き) だから大人になったら殺すと無理難題を押し付けた。 どんな生き物であってもいずれは成長し大人になる。 実装とて例外なく。 しかもこいつは飼われてから栄養のあるものを毎日食わせたので成長速度も野良とは比べ物にならない。 「嫌テス!大人になんかなりたくないテス!」 テステスやかましい事この上ない。 仔実装のソプラノボイスからテノールボイスへと変わっていた。 成体になれば重低音あふれるバスボイスになるのは明らか。 こんな声の糞生物なんぞ誰も飼いたいなんて思わないだろう。 事実、現在は愛護派でも成体を飼っている人は居ない。 成体になったらどんな賢く愛情深くても処分場行きである。 一部虐待派に買い取ってもらう人も居るが結果は同じだ。 「どうしたら!どうしたらいいテス!」 実装はまだ喚いている、何をしても無駄だというのに。 「そうテス!これ以上何も食べなければ成長しないテス!」 確かに栄養が与えられなければ成長はしないだろう。 だがそれでは… 「だめテス!それではワタチが餓死してしまうテス!ああ!どうすればいいんテス!」 どうしようもねぇな、成長阻害する薬を使ってもいつかは確実に成長してしまう、諦めな。 「あー、色々考えてたら疲れたテス、また明日考えればいいテス、それよりお腹が減ったテス」 さすがは実装、もう考えるのをやめたか、餌皿に盛ってある金平糖をガツガツ食らっている。 「食ったら眠くなったテス!お休みテッス〜ン」 いい夢見ろよ、今夜が最後の夜になるんだからな。 中実装でいられる時期は非常に短い。 恐らく明日起きた時には成体になっているだろう。 「デェ?」 「おはよう糞蟲」 「デデェ!?」 次の日、実装は見事に成体になっていた。 俺は数々の虐待道具を握り締め彼女に近づく。 「んじゃ処分を始めようか♪」 「ちょっと待つデス!これは何かの間違いデス!」 「デスデスうるせーよ、醜悪な声で鳴きやがって!このブサイクめ!」 「確かにブサイクデス!この声は酷すぎデス!でも生きる権利くらいはある筈デス!」 「ねーよ、そんな事言ってるから糞蟲って言われるんだ」 「まだ子供も生んでないデスーーー!まだ何も幸せを掴んでいないデスーーーー!」 下らん、今まで散々美味しいもん食っておいて何が「幸せ掴んでない」だ。 まあいいや、これからは俺が幸せを掴む番だ。 俺は手始めに低反発ウレタンの感触を堪能するべく目の前の糞蟲に拳を叩き込んだ。 「こうなったら媚びるデス!デッス〜…ッボォ!」