実装石保護センター11 水槽の中、馴れ合いもせず距離感を保ってすごく二匹の仔実装石。 さて、この二匹にどういった設問を与えるか。 見た目は特に問題なく、トイレの躾けもできている。 食べ物も分けあい、奪い合うこともない。 もともと飼い実装だった痕跡が感じられる。 つまりこの個体達の選定は元飼い主の選定といえるのかもしれない。 Bは愛嬌良く、餌やトイレの掃除をするたびに挨拶する。 Dは基本的に寝ている。掃除の邪魔だよと促すと起きてきて別の場所でころんと寝る。 二匹は特に何も要求してくる様子はない。どちらも優良種といえる。 このまま保護していけば何事もなく成体に育つだろう。 ・・・とはいえ実装石だ。 平和で幸福な一生など訪れるはずがないのだ。 そんな時、センターに一件問い合わせが入った。 「スカーフをつけた実装石がほどされていないか?」と。 そういえばBは来る時スカーフをしていた。 念の為、Bがしていたスカーフは残してあった。 スカーフの特徴を照らし合わすとどうやら同じ物であることがわかった。 保護していることがわかると電話の主は引き取りたいと申し出た。 引き取りたいという相手がいるのならそれを断る大義名分はない。 私はすぐに了承した。 引き取り手が来たのは三日後であった。 その間、二匹は特に何の変化もなく普通に過ごした。 「この度はどうもありがとうございます。」 頭を下げる引き取り手。中年の女性であった。 「この仔は生前にうちの母が飼っていた仔だったんです。」 「母の遺言でこの仔に関することが書いてあって・・・ともかく助かりました」 諸処の手続きを済ませ、私は虫かごにCの仔実装石を入れると女性に手渡した。 「この仔がお話していた実装石になります。それではよろしくお願いいたします」 「ありがとうございます。母に良い弔いができます」 女性は笑顔で虫かごを受け取り立ち去った。 弔い?少し引っかかったがCがこの先どうなろうと私には関係なかった。 セレクションは結果、Dが生き残った。 トトカルチョに勝ち抜いた職員はDに少し豪華な餌を与えることにする。 「こいつってプリン食うかな?高級プリンが余ってたんで持ってきたんだけど」 実装石の食性は雑食。今更だが何でも食べる。 水槽の中に職員が持ってきたプリンを食べやすく盛って与えた。 反応が薄いDが喜んで食べている。どうやら好物らしい。 なんだか愛らしく見えて、思わずDの頭を指で撫でてやる。 セレクションの優勝者Dは嬉しそうである。 さて、次のセレクションだ。 水槽にまた新しい四匹の仔実装石が入れられた。