実装石保護センター8 「お注射怖かったテチュ。痛かったテチュン」 涙目になりながらワクチンを打たれた肩を摩るモモ。 まだ発症前だったので他の二匹に比べて元気だった。 最初に発症した仔実装はスヤスヤと寝ていた。 この個体はいつも寝ているので普段と違いがないように見える。 つまり快調に向かっていると言う事なのか。 一方、ミミはぐったりしていた。 ワクチンは打たれたものの回復させる体力と気力が残っていなかったようだ。 虚な目で上の空に何かブツブツと呟くミミ。 「ミミちゃん大丈夫テチ?」 モモが声をかけるが届いていない。 「ごめんなさいテチ。ごめんなさいテチ」 ミミの脳裏に映し出されるもの。 それは短く儚い走馬灯だった。 「生まれたばかりの頃テチ。ママはすごく優しかったんテチ。ママに抱っこされママのお歌で眠るんテチ」 「いつもママいってたんテチ。お友達や姉妹とケンカをしちゃいけないテチ。勝手に遠くに言ってはいけないテチ。知らないニンゲンにはついて言ってはいけないテチ」 「お姉ちゃんたちがいじわるテチ!なんでワタチの分のご飯食べちゃうテチ? ひどいテチ!蛆ちゃんはなんでワタチに懐いてくれないんテチ?ワタチはこんなに蛆ちゃん大好きなんテチ?みんなみんな!もう知らないテチ!」 「あれ!?ここはどこテチ?ママー!?」 「ニンゲンさんテチ。ワタチ、ママとはぐれたんテチ」 「どこにいくんテチ?」 「ありがとうテチ。このゴハンおいちいテチ!もっと食べたいテチ!」 「お腹いっぱいテチ♪しあわせテチ。これがママがいってた飼いってことなんテチ?」 「お風呂いれてくれるんテチ?気持ちいいテチー」 「ニンゲンさんそこはおまたテチ。だめテチ・・・・・・」 「ワタチニンゲンさん大好きテチュン・・・・・・」 「今日は公園にいくんテチ?公園はママがいるんテチ!」 「うれしいテチ!ママも一緒に飼ってくれるんテチ!」 「ここテチ!ここにワタチのママとお姉ちゃんと妹ちゃんが住んでるんテチ!」 「ママ!ニンゲンさんがワタチたちを飼ってくれるんテチ!」 「テエエエ!!やめてテチ!ママになにするんテチ!!」 「テエエエエエエエン!テエエエエエエン!ニンゲンさんがママを潰しちゃったテチ」 「お願いテチ!蛆ちゃんは潰さないでほしいテチ!本当にいい子なんテチ!」 「ワタチに懐いてくれないけど大好きなんテチ!」 「お腹すいたテチ。ずっとゴハン食べてないテチ・・・・・・」 「ニンゲンさん!お願いテチ!ゴハンほしいテチ!」 「これゴハンテチ?美味しいテチ。ありがとうテチ。蛆ちゃんにもゴハン食べさせてあげてほしいテチ」 「なにテチ?まんまるいおもちゃテチ?なんテチ?」 「これは蛆ちゃんの頭テチ!!!」 「蛆ちゃんを返してテチ!ワタチの大切な妹なんテチ!」 「テエ!!ワタチが食べたゴハン・・・・・蛆ちゃんテチ・・・・・・」 「もうやめてテチ。ワタチは蛆ちゃん食べたくないテチ。」 「ゴボボボボ・・・お口に無理矢理突っ込むのはやめてテチ」 「ごめんなさいテチ。蛆ちゃんごめんなさいテチ」 「テエ・・・なんでテチ?なんでテチ?なんでゴシュジンさま!!ワタチを置いていくんテチ?」 「おいてかないでテチーーー!!」 「ママ。蛆ちゃん。会いたいテチ・・・」 「お腹すいたテチ。ごめんなさいテチ。他所の子の蛆ちゃん食べちゃったテチ」 「ワタチは悪い仔テチ。本当にごめんなさいテチ」 「ママ・・・ワタチ・・・」 「大丈夫テチ?ミミちゃんしっかりするテチ」 ミミは震える手で何かにすがり付こうとする。モモはがっちりとその手を掴んだ。 ミミは微笑を浮かべた。 「ママ・・・ここにいたんテチ?」 ガラスが粉々になる音。ミミの偽石が砕け散った。