公園のベンチに腰かけていると仔実装が媚びてきた。 いつもなら速攻叩き潰すが今は道具の手持ちがない。 それでもポケットを漁ってみるとあるものが見つかった。趣味の手芸で使い残していたピンクのリボンだ。 おあつらえ向きに長さも十分。俺は仔実装を拾い上げリボンを耳に結んでやった。 それだけで仔実装はうっとりとしたり触ったりはしゃいだりとせわしなくなる。 飼ってやらんぞ。その言葉を飲み込みスマホの実装リンガルアプリを起動し話しかけた。 「いいか。お前は特別なんだ。グズでノロマな連中に自慢してやれ」 その言葉を聞くと仔実装は気持ち悪い笑みを浮かべ「チププ」と笑った。どうやら予想通りの糞仔蟲だったようだ。 ベンチから下ろすと糞仔蟲は一目散に仔実装が5、6匹集まっている溜まり場へと掛けていった。 その勢いのまま糞仔蟲は仔実装達に叫びまくった後「テッチ〜ン♪」と言いながらポーズをとった。所謂セクシーポーズのつもりなのだろう。 その後も糞仔蟲はアピールを続けるが他の仔実装の表情はみるみる険しくなっていく。 やがてその内の一匹が「テチャアァァァ!」と叫びながら糞仔蟲を押し倒した。 盛大に転ばされた糞仔蟲だが何をされたのか理解すると同時に同じような叫び声を上げて取っ組み合いの喧嘩に発展する。 最初の数秒こそ拮抗した戦いだったがすぐに残りの仔実装も参戦し袋叩きにし始めた。 「テジャ!テベッ!?テッチャァァァァァ!」 公園にいつものように仔蟲の悲鳴が木霊する。 しかしそれもすぐに終わった。成体実装の一匹が現れ「デスゥ!」と全員に向かって吠えたのだ。 突然の大人の乱入に仔実装達はたじろぎ糞仔蟲から距離を取る。 すると成体実装は糞仔蟲の下へと歩み出し手を差しのべたのだ。 あいつの親だろうか?そう思ったが違った。 成体実装は糞仔蟲が手を取ると勢いよく振り上げそのまま盛大に地面へと叩き付けたのだ。どうやらあいつも糞仔蟲の言動に腹を立てていただけらしい。 「デジャァァァァァァ!!」 顔半分と左腕を紅葉おろしにされて悲鳴をあげる糞仔蟲。 しかし勢いがありすぎて他の実装石達と距離が開いてしまった。このチャンスを逃すまいと糞仔蟲は全速力で俺の下へと走り出した。それに気付いた仔実装達が慌てて追いかける。 だが重症を負いフラついているが仔実装が追い付くよりも先に俺の下へとたどり着くだろう。 しかし仔が散々な目に遭っているというのに親はいったい何をしているのか、というと実は糞仔蟲に遅れて俺の足元へと来ていた。 曰く「ワタシの可愛い可愛い大事な仔を飼うというのならワタシも一緒に飼うデス!お前は親子を引き離すクソニンゲンなんデスか!」などと自分も飼わせようと必死だ。 自業自得とはいえ同族に滅多打ちにされているのにすら気付かないくせに大事な仔などとよく言えたものだ。 しかし親子の再開まであと少し。 「デェェェェェン!!」 と泣き叫ぶ仔の声に振り返り親実装は驚愕した。 「何負けてるデスこの役立たず!負けて公園を去るなんて恥さらしもいいところデス!」 仔の状態よりもプライドが優先とはこの親にしてこの子ありというところだったようだ。 だが俺は優しいからな。すぐに願いを叶えてやることにした。 いまだに暴言を吐き続ける親の頭を掴み健気に駆け寄る糞仔蟲目掛けて全力投球! 「チベェ!?」「デジャビャァァ!!?」 狙いは違わず親と糞仔蟲は仲良く公園の染みとなった。 これでいつまでも親子一緒だ良かったな。 遊び飽きた俺は何事もなく家へと帰るのだった。