「デスゥデスゥン・・・」 「テチュテチュン・・・」 木陰の下で陽気を満喫していた実装石の親仔。 同族に追い立てられ、虐待派にいじめられ、虫や獣に姉妹を食べられた。 地獄の日々であった。 誰もいない木々の生い茂る公園まで逃げ延びて安心したところであった。 「もう安心デスゥ・・・これからワタシタチはシアワセになるデスゥ」 深く深く眠りに落ちていた・・・。 「テチィ・・・」 次に仔実装が目覚めた時、そこは知らない真っ白な天井があった。 沈み込むように柔らかく包み込むフカフカのマット。 この上なく心地よいその温もりにまた深く眠気を誘うが仔実装は首を振って 眠気を払った。起き上がりマットから這い出る。 見渡せば清潔な真っ白な一室。誰もいない。 「ママァ・・・?」 マットの横には仔実装自身と同じぐらいの大きさの丸い皿。 皿の上にはたくさんの甘い香りのする丸い食べ物。 ぐぅぅぅぅ・・・・。腹の虫が鳴る仔実装。 キョロキョロしながら思わずその甘い香りの食べ物に手をつけた。 「甘いテチュ!美味しいテチュ!!」 貪るようにその甘い食べ物を頬張る。 甘い!美味しい!!甘い!美味しい!!甘い!美味しい!! 思考は完全に食事に支配された。 延々と貪り続けお腹がはち切れんばかりに膨らみ、身動きさえ取れなくなる。 皿の上でコテンっと寝転がる仔実装。 膨れ上がったお腹を押さえながらようやく母のことを思い出す。 「ママ・・・どこいったんテチィ?」 虐待から逃れ、寄り添っていた母の姿はそこになかった。 仔実装はお腹を押さえたまままた寝息をたてはじめた。 カラン・・・カララン・・・ 仔実装が目覚めた時、ふかふかのマットの上だった。 隣に置かれた丸い皿には美味しい食べ物が継ぎ足されている。 「ニンゲンさんがいるテチュ・・・」 人影が見える、仔実装は起き上がって向かっていく。 「ニンゲンさん!ママは!?ワタチのママはどこテチュ!?」 応答はない。身振り手振りでパタパタと表現してみるが伝わっている様子はなかった。 ニンゲンは仔実装を掴むと衣類を剥ぎ取り、洗面器の中に入れる。 洗面器の中にはお湯が張ってあった。 ニンゲンは丁寧に仔実装の体をお湯で濯ぎ、水気を払うとタオルで拭う。 ピンクの可愛い衣類が用意されてあった。 「かわいいテチュ!これ着ていいんテチュ?」 媚びるようなポーズを見せて訊ねる仔実装だが言葉は通じていない。 そもそも回答も求めていなかった、勝手に服を着る。 「かわいいテチュ!かわいいワタチにピッタリテチュ!」 悦に浸る仔実装。 「そうテチュ!ママは!?ワタチのママはどこテチュ?」 「ニンゲンさん教えてテチュ?」 言葉が通じていないことがわからない仔実装。 ニンゲンは洗面器を持ってその部屋から出て行った。 あれから何日か経った。 朝起きて、与えられた食事を食べて、体を洗ってもらい。 清潔で可愛い服に着替えて寝る。 変わり映えがしないが身の危険もなく満たされた1日が続く。 仔実装はすくすくと大きくなる。 幾度となくニンゲンに母の事を訊ねたが通じるわけもなく。 ニンゲンも別に意思の疎通を取りたいわけじゃないようだ。 今日も目が覚めて、食べ物が置いてある事を確認した。 「よく寝たデスゥ、さあ今日もご飯を食べてやるデスゥ」 ニンゲンがきた。今日も清潔な衣類を持ってきた。 「ご苦労デスゥ そこに置いとくデス 先に飯にするデスゥ」 ほかに気配がした。ニンゲン以外に誰かいた。 黒い服を着た仔実装だった。 仔実装はいつもの食べ物が置いてある皿の近くにポツンと置かれた。 「ここはどこテチュ?お腹空いたテチュ あ、ご飯テチュ」 皿に向かって駆け出していく仔実装。 「何をするデスゥ!これはワタシの食べ物デス!」 黒い仔実装に蹴りを入れる。 「テェエエエエン!蹴ったテティ!アイツがワタチを蹴ったテチィ!!」 「うるさいデスゥ!!私のメシに手を出すなデスゥ!コイツめ!コイツめ!」 黒い仔実装の顔や腹を踏みつけて怒り狂う。顔は腫れ上がり口からゲロを吐き出す。 「参ったかデスゥ!身の程を弁えろデスゥ!」 「テェ・・・」 黒い仔実装は伸びてそのまま気絶した。 「デプププ バカなヤツデスゥ」 皿の食べ物に手をつける実装石。 「ふう、、、」 ニンゲンのため息が聞こえたが気にせず実装石は貪る。 カチャン 金属音が聞こえた。実装石の足に重い鉄球が繋がれた。 「何をするデスゥ?重いデスゥ 」 通じる様子はない。 「まあいいデスゥ メシを続けるデスゥ」 気にせず食事を続ける実装石。 ニンゲンはのびた黒い仔実装の頭をつまむとそのまま連れて行った。 「ふぅ・・・お腹いっぱいデスゥ 食ったら寝るデスゥ」 コテンっとそのまま寝転がった。 実装石が次に起きた時、違和感があった。 地面が冷たい、ふかふかのマットがない。着ていた服がない。パンツ一枚。 足には重い鉛玉。周囲はガラス張り、水槽の中にいた。 「こ、これはどういうことデスゥ?なんでワタシはこんなところに入ってるんデスゥ?」 「そんなことよりお腹が空いたデスゥ!メシデスゥ!メシデスゥ!!」 トン!トン!トン!! ガラスを叩く実装石。非力すぎて大した音は立たない。 手前の方にマットと皿が置いてあるのが見える。 お皿には黒い仔実装が食べ物を食べていた。 「オイ!オマエ!なにワタシの食べ物を食べてるデスゥ!それはワタシの食べ物デスゥ!」 トン!トン!トン! ガラスを叩いて抗議する実装石。 テェ? 音に気付き、あっけに取られる仔実装。 「おはようございますテチ!先にご飯食べてるテチ!」 礼儀正しく頭を下げる仔実装。目の周りは青タンができ、顔は腫れていた。 「オマエ!ワタシのご飯を食べるなデスゥ!返すデスゥ!!」 「ごめんなさいテチュ!でもお腹が空いててテチュ」 「オマエは悪い仔デスゥ!いいからワタシにメシを返すデスウウウ!!」 地団駄を踏んで騒ぎ出す実装石。仔実装はそれをみてオロオロする。 「返すテチュ?どうしたらいいテチュ?」 「まずワタシをここから出すデスゥ!はやくするデスゥ!!」 「テエエエエエン!そんなのできないテチュ!」 「使えない糞蟲デスゥ!それならはやくニンゲンを呼んでこいデスゥ!」 「テエエエエエエン!」 何もできず申し訳なさそうに泣く黒い仔実装。 ガチャ、、、 ドアの開く音がした。ニンゲンの気配だ。 「オイ!バカニンゲン!何こんなところにワタシを閉じ込めてるデス!早く出すデス!」 激昂する実装石。するとニンゲンは何かを持ち上げて水槽の中に入れた。 「オイ!そんなことはいいから早くするデスゥ!ん?」 やつれて薄汚れた実装石が水槽の中に。 「生きてたんデスゥ!?ワタシデスゥ!アナタのママデスゥ!」 「マ、ママ!?ママ!!」 生き別れた母との再会だった。 「うれしいデスゥ・・・すっかり大きくなって・・・うれしいデスゥ」 駆け寄って抱きつく母実装。大粒の涙を流して咽び泣く。 「ママ!ママァアアア!」 裸の実装石も喜び応える。 「辛かったデスゥ。寂しかったデスゥ。でもこのニンゲンさんが助けてくれたんデスゥ」 「そうなんデスゥ?」 「ニンゲンさんありがとうデスゥ ワタシのムスメまで助けてくれて・・・」 深々とお辞儀する母実装。 「さあオマエもお礼をするんデスゥ ニンゲンさんにありがとうするデスゥ」 「デェ?ありがとうデスゥ ところでこの重いの取ってデス」 雑なお礼をして鉛玉を外すように要求する裸実装。 「あとここから出すデスゥ 可愛い服も返すデスゥ メシも早くしろデスゥ!」 娘の悪態に驚く母実装。 「やめるデスゥ!」 パチン! 娘の顔をはたく。 「痛いデスゥ ママがたたいたデスゥ!ワタシをママが叩いたデスゥ!!」 デエエエエエエエン!! 泣き喚く裸実装。 ニンゲンは水槽から離れ黒い仔実装の方へ。 ニンゲンは黒い仔実装の世話を終えるとそのまま部屋から去って行った。 裸実装はそれから何時間も泣き続けた。 裸実装は泣き疲れて寝てしまっていた。 目覚めると母の膝枕であった。 「起きたデスゥ?たたいてごめんなさいデスゥ ママが悪かったデスゥ・・・」 「お腹空いたデス」 申し訳なさそうに謝る母実装を尻目に空腹を訴える裸実装。 「食べ物はないんデスゥ ごめんデスゥ」 「じゃあこれ外してデス」 足枷を指す裸実装。 「ごめんなさいデスゥ これはママには外せないデスゥ・・」 自分の無力さを嘆く母実装。 「使えないママデスゥ!!デエエエエン・・・」 泣き喚く裸実装。 娘の口の悪さに狼狽える母実装。 「やめるデスゥ そういう口の利き方はいけないんデスゥ」 母が諭すが背を向ける裸実装。続けて泣き喚く。 「ワタシは不幸デスゥ こんなところで裸でメシも食べれないデス!!」 五月蝿くしたせいか黒い仔実装が目を覚ました。 「よく寝たテチュ」 ふあああと背伸びして起き上がると実装石たちに向けてお辞儀した。 「おいオマエ!何を偉そうにしてるんデスゥ!はやくワタチをここから出すデス」 「テェ?」 首を傾げる仕草を見せる黒い仔実装。 「とぼけてんじゃないデスゥ!!なんとかしろデスゥ!!」 「ワタチにはどうすることもできないテチュ ごめんなさいテチュ・・・」 「使えないヤツデスゥ!!」 地団駄を踏んではキーキーと叫び狂う裸実装。 「なんという事デスゥ あんな可愛かった我が仔が・・・」 母実装は我が子の醜態に涙した。 ガチャ ニンゲンがやってきた。 ニンゲンはまた黒い仔実装の世話を始める。 「ニンゲンさんありがとうテチ!いつもありがとうテチ!」 深々とお辞儀する黒い仔実装。そして手をくいっと水槽に向ける。 「あのオネエチャンタチを助けてあげて欲しいテチ お腹空いてて可哀想テチ・・・」 手をすり合わせて懇願する黒い仔実装。 ニンゲンは水槽の方を見やると近づいていく。 「やい!バカニンゲン!早く食べ物を用意するデス!ワタシを怒らすなデス!」 近づいてきたニンゲンに向けてキーキー喚く裸実装。 ニンゲンは裸実装を無視して母実装に近づいていく。 泣いてる母実装の頭を撫でる。 「デェ?」 母実装は撫でられたことに気づい、ニンゲンを見やる。 ニンゲンはキューブ状の食べ物を一つ、母実装の前に置いた。 「こ、これはご飯デス?あ、ありがとうございますデスゥ」 母実装はお辞儀をする。 ガチャン ニンゲンは母実装の挨拶に応じずそのまま部屋からでていった。 一瞬の静寂があった。 「・・・さあムスメチャン ご飯もらえたデス これを食べるデスゥ」 先ほどもらった餌を娘に差し出す母実装。 ギュルルルルルル・・・ 腹の虫が激しくなった。 「ママはいいんデスゥ アナタが食べていいんデス」 裸実装は餌に手を掛けるとパチっと払った。 「いらないデス!こんな不味そうなメシなんて!」 「なにするデスゥ!?」 「ワタシはもっと美味しくて上品な甘い物がふさわしいデス!」 「食べ物を粗末にしてはいけないデスゥ!」 「うるさいデス!そんなに言うならママが食べればいいデス!!」 裸実装は餌を拾い上げると母実装の顔にぶつけた。 「ひどいデスゥ オマエはなんでそんな糞蟲になってしまったんデスゥ・・・」 「糞蟲?誰にいってるんデスゥ!ママでもゆるさないデス!!」 ポカポカと母実装を殴りつける裸実装。 母実装はされるがまま殴られ続けた。 ―それから何日か。 ニンゲンが黒い仔実装の世話をして、ついでに水槽に餌を落としていくルーティーンができていた。 「ママ・・・ママ・・・お腹空いたデス・・・お腹空いたデスゥ・・・」 ボロボロにやつれ汚れた裸実装。縋るように母実装に懇願する。 「オマエがいらないって言うから食べ物はないデスゥ」 「ママだけずるいデス ママだけ食べてずるいデスゥ・・・」 「オマエが食べないからママが食べてただけデスゥ」 「次ニンゲンさんがくれたら分けてあげるデスゥ」 「ママ・・いっぱい食べたいデスゥ」 「しょうがない仔デスゥ・・・」 ガチャ ニンゲンがやってきた。 「ニンゲンさんいつもありがとうデスゥ!今日はいつもより食べ物を多くくださいデス」 言葉は通じてない。身振り手振りで伝えようとする母実装。 ニンゲンはいつも通り一つだけ食べ物を母実装にあげる。 「さあ、ご飯もらえたデスゥ・・・これを食べるデスゥ」 「よこすデスゥ!!」 食べ物にむしゃぶりつく裸実装。 「もっと食べたいデス!!こんだけじゃあ足りないデス!」 「もうないデスゥ・・・今のだけデスゥ・・・」 「デエエエエン!!もっと食べたいデス!!」 ジタバタ暴れる裸実装。どうすることもできず悲しく我が仔を見つめるしかできなかった。 そうして、ニンゲンに母実装が餌をもらい、それを裸がもらうという流れができた。 そんなルーティーンが続き、いよいよ母実装が飢え始めた。 「ムスメチャン・・・そろそろママもご飯を食べたいデスゥ・・・」 飢餓状態の母実装は我が仔に懇願する。 「だめデスゥ!ワタシはまだお腹いっぱいになってないデスゥ!」 「ママはアイツにもらえばいいデスゥ」 マットで大人しく眠る黒い仔実装・・・だった実装石を指す。 「デスゥ・・・黒チャン ごめんなさいデスゥ 食べ物をわけでほしいデスゥ」 寝息を立てて健やかに眠る黒実装。声は届いていない。 「だめデスゥ・・・」 ギュルルルルル 腹虫が鳴る、痛いぐらいにお腹が減る。 「ママはこのままだと死んでしまうデスゥ・・・お腹、空いたデスゥ・・・」 「知らないデスゥ!お腹が空いてるのはワタシも同じデスゥ!」 裸実装が母実装を蹴り飛ばした。 パキン・・・ 飢えても我が仔に食べ物を与え続けた母実装は殴られたショックで偽石が砕け散った。 舌を出し、だらしなく崩れ落ち動かなくなる母実装。 「フン!ママが悪いんデスゥ!」 悪びれもしない裸実装。 ガチャ ニンゲンが部屋に来た。 「オイ!ニンゲン!早くメシよこすデスゥ!ワタシはお腹ペコペコデスゥ」 ニンゲンは裸実装を見ると無視して黒実装の世話を始める。 「おはようございますデス!ニンゲンさん!いつもありがとうデスゥ!」 黒実装はペコっとお辞儀をする。 ニンゲンは黒実装の頭を撫でると世話を始めた。 「ニンゲンさん大好きデスゥ♪」 媚びたポーズを取る黒実装。 「無視するなデスゥ!ワタシはお腹が減ってるんデスウウウ!」 いくら叫んでもニンゲンに言葉は伝わらない。 ニンゲンは黒実装の世話を終えるとそのまま部屋からでていった。 「ワタシのメシがないデスゥウウウウウウ!」 裸実装は泣き叫んだ。 それから何日か経過した。裸実装は飢え始めた。 今まで食べ物がもらえたのになぜもらえないのか。 「なんでワタシは食べ物もらえないんデスゥ?こんなに可愛いワタシが・・・」 「黒いアイツも、ママももらえたデスゥ・・・」 「なんでデスゥ・・・ママはもらえてたデスゥ」 「ママ・・・」 動かなくなった母実装。 「そうデスゥ・・・ママはもらえてたんデスゥ」 母実装の骸に手を掛ける。 「こうして・・・こうして・・・こうするデスゥ」 動かなくなった母実装から衣服を剥ぎ取り、剥ぎ取った衣服を着る。 「こうすればワタシはママと同じはずデスゥ!」 「バカなニンゲンは区別つかないはずデスゥ!デプププ・・・」 ニタニタ笑みを浮かべながらニンゲンが来るのを待った。 ガチャ ニンゲンがやってきた。 「さあニンゲン!ワタシに食べ物をよこすデスゥ!」 ニンゲンは無視して黒実装の世話をする。 「なんでデスゥ?ママといっしょデスゥ!ワタシはママなんデスゥ!食べ物よこすデスゥ」 ニンゲンは部屋からでていった。 「ママじゃダメだったデスゥ・・・お腹空いたデスゥ・・・」 ぎゅるるるるる・・・ 腹の虫が鳴く。 「かわいそうデスゥ ニンゲンさんにワタシがお願いしてみようかデスゥ?」 憐れむ黒実装。 「うるさいデス!同情すんなデスゥ!!このクソムシがデスゥ!!」 「アイツは食べ物ももらえてお世話もしてもらえて・・・くやしいデスゥ!!」 「なんで可愛いワタシがこんな目にデスゥ!!」 「ワタシの方が可愛いデスゥ・・・何が違うんデスゥ!!」 「服デスゥ?オマエ!ワタシにその服をよこすデスゥ!!」 怒り狂う娘実装。黒実装は拒絶した。 「嫌デスゥこれはワタシのお服デスゥ・・大切な大切なお服デスゥ」 「食べ物をもらえるようにワタシがお願いするデスゥ・・・だからデスゥ」 「うるさいデスゥ!このクソムシ!!」 「服が黒いぐらいデスゥ この汚らしい服がなんデスゥ 汚したら黒くなるんデスゥ」 「オマエは汚いデスゥ!!」 汚い・・・アイツは汚い・・・。 「そうデスゥ 服を汚せばいいデスゥ 汚して真っ黒にすればアイツと同じデスゥ」 ブリブリブリ・・・・ 娘実装はパンツを降ろして糞をひり出した。 ひり出した自分の糞で服を汚す。着ていた服はたちまち濁っていく。 「これでいいデスゥワタシはアイツと同じデスゥ デププ」 娘実装はニタニタ笑い始めた。黒実装は嫌悪感を感じた。 ニンゲンがやってきた。 いつも通り黒実装の世話をする。 「オイ!ニンゲン!黒いのはここにもいるデスゥ!早くこっちも世話するデスゥ」 ドンドンドン! 水槽を叩きながら自分は黒実装だとアピールする娘実装。 ニンゲンはチラッと水槽をみると変わらず黒実装の世話を続ける。 「やい!バカニンゲン!なんでワタシを無視するんデス!」 「こんなに可愛いワタシを!ワタシはソイツ以上に可愛いデスゥ」 「世話させてやるといってるんデス!はやくメシを用意するデスゥ」 「手をくれになっても知らんデス!今のうちデスゥ!はやくするデスゥ!!」 ニンゲンはそれでも娘実装に興味を示さなかった。 「なんでデスゥ!!デエエエエン」 バタバタと暴れると娘実装は汚物を漏らし出した。 「ウンチ出たデスゥ!オマエがメシを用意しないからデスゥ!!」 「オマエのせいデスゥ!オマエのせいデスゥ!オマエのせいデスゥ!」 娘実装は汚物を掬うと水槽のガラスに投げつけた。 ベチョ、ベチョ、ベチョ、ベチョ 水槽がクソまみれになっていく。 ニンゲンはその様子に気付き、黒実装の世話をやめて部屋をでていった。 しばらくしてニンゲンが戻ってくる。 娘実装はまだガラスにクソを投げつけていた。 パァーーン! ニンゲンはエアガンのトリガーを引いた。 飛び出した弾は娘実装の眉間めがけて飛び出した。 パァーーン! 二発目の弾がお腹にめり込んだ。 娘実装はクソを投げるのをやめて気絶した。 ニンゲンは黒実装の世話に戻った。 それからニンゲンがいなくなって・・・。 「大丈夫デスゥ?」 黒実装は心配そうに声を掛ける。 「痛いデスゥ・・・お顔とお腹がメチャメチャ痛いデスゥ」 黒実装はどうすることもできず一緒なって泣く。 「可哀想デスゥ・・・で、でもお部屋は汚しちゃダメデスゥ・・・」 「痛いデスゥ・・・痛いデスゥ・・・ワタシは不幸な実装石デスゥ」 眉間からだらだらと流れ出る血。お腹からも血が溢れる。 流れ出た血が目に入った。 「デスゥ!?」 緑色の目が赤く染まっていく。 両目が赤く染まると実装石は妊娠する。 娘実装は子供を孕んだ。 ・・・孕んだのだがお腹に穴が空いているため、腹は膨らまず穴から漏れ出す。 実装石の幼体、蛆がポロポロと腹からこぼれ出る。 まるで膿のように滴れる蛆。 「デエエエエン!!ワタシの中からウジちゃんが・・・」 「ウジちゃんがいっぱい出てくるデスゥ!!」 この日、娘実装は5匹のウジを産んだ。 ガチャ ニンゲンがやってきた。今日も黒実装の世話をする。 「おはようございますデス ニンゲンさん! みてほしいデス!」 水槽を指す。 「あそこの実装ちゃんが子供を産んだんデス!可愛いデスゥ!5つ仔ちゃんデスゥ」 「可愛い可愛いウジちゃんデスゥ」 ニンゲンが水槽を見るとのびた汚い実装石に5つの蛆が這い回っていた。 「ニンゲンさんレフー」 「ニンゲンさん!こんにちはレフー」 「お腹空いたレフー」 「ぷにぷにしてくださいレフー」 「ママが動かないレフー助けてレフー」 ニンゲンは黒実装の皿から食べ物を掴むとパラパラパラと水槽に撒いた。 「ありがとうデスゥ あの仔達も喜ぶデスゥ」 黒実装はお辞儀した。 「ワタシも赤ちゃん産みたいデス♪可愛いデスゥ」 ニンゲンには通じていなかった。 水槽に撒かれた餌にウジ達が群がった。 「ママ」 「ママおきてレフ」 「ママお腹空いたレフ」 「ママぷにぷにしてレフ」 「ママ大丈夫レフ?」 撃たれて怪我したところの痛みが和らいで、ようやく気がついた実装石。 起きた時にはウジに囲まれていた。 「なんデスゥ? オマエタチ?」 ウジたちは這いながら首を振って何かを示す。 「ママー ゴハンレフー」 「ママの分レフー」 「ウジチャンお腹空いたけど我慢したレフー」 「ママー食べてレフー」 「ママ元気出してレフー」 ニンゲンが水槽に撒いていった餌が何粒か。 実装石は餌に飛びついた。 「オマエタチはいい仔デスゥ!!ママは感激デスゥ」 あっという間に餌を食べ尽くした。 「ママー元気になったレフー?」 「お腹空いたレフー」 「ママーぷにぷにしてレフー」 「ママが元気なら嬉しいレフー」 「ウジチャンママ大好きレフー」 「美味しかったデスゥ オマエタチありがとうデスゥ」 でももっと食べたい。実装石の腹の虫が鳴いた。 次の日。 ニンゲンは今日も黒実装の世話をする。 5つのウジはレフーレフーと鳴いて餌を懇願する。 ニンゲンは水槽に餌を撒いた。 餌に有り付こうとするウジ達。 その餌に実装石も飛びついた。 「美味しいデスゥ」 「おいしいレフー」 「おいしいレフー」 「おいしいレフー」 「おいしいレフー」 「ウジチャンの分がないレフー」 餌にありつけないウジが出てきた。 「ママーウジちゃんの分がないレフー」 「早いモン勝ちデスゥ!オマエの分はないデス!!」 「ウジチャンお腹空いたレフー」 「うるさいデスゥ!!メシは自分で用意するデスゥ!」 怒った実装石は食いっぱぐれたウジを力一杯踏みつける。 ブチッ!! ウジは潰れて動かなくなった。 ニンゲンが来た。 「ニンゲンさんレフー」 「お腹空いたレフー」 「ぷにぷにしてレフー」 「ウジちゃんが動かなくなったレフー」 ニンゲンは黒実装の世話が終わって水槽に餌を撒いて出て行った。 餌に群がるウジ達。 実装石も餌に飛びついた。 「美味しいデスゥ!」 「美味しいレフー」 「美味しいレフー」 「美味しいレフー」 「ウジちゃんの分がないレフー!!」 「ママーウジちゃんの分がないレフー」 「うるさいデスゥ!!オマエに食わせるメシはないデスゥ!!」 実装石はウジを踏み潰した。 「こ、こわいレフー」 「ママーやめてレフー」 「うるさいデス!ママはお腹が減ってるんデスゥ!」 ウジ達はガタガタ震えた。 それから次の日。 ニンゲンが世話をしにやってきた。 「ニンゲンさんレフー」 「助けてレフー」 「ママが怖いレフー」 ニンゲンは首を傾げつつ、水槽に餌をやり、黒実装の世話を始めた。 「ご飯レフー」 「お腹空いたレフー」 「こわいレフー」 餌に実装石が飛びついた。 「美味しいデスゥ」 「美味しいレフー」 二匹のウジは餌に手をつけずに我慢した。 「美味しいレフーもう一個食べるレフーウジちゃん食べ盛りレフー」 「何をするんデスゥ!それはワタシの食い物デスゥ!!」 実装石は二つ目の餌を食べようとしたウジを踏み潰した。 次の日、動けるウジは二匹だけになった。 ウジは母実装が怖くて仕方なかった。 怒らせたら踏み潰される。 二匹は寄り添って泣いた。 「腹減ったデスゥ・・・もっと食べたいデスゥ ニンゲンはケチデスゥ・・・」 横になって尻をボリボリ掻く実装石。 黒実装が近づいてきた。 「仔供は大事にしなきゃいけないんデスゥ」 チラッと黒実装の方をみた実装石。だが相手にしない。 はぁ・・・と、ため息を吐きながらマットへ戻っていった。 ニンゲンが世話をしに来た。 ウジ達は怯えて静かだった。 ニンゲンは黒実装の世話を終えると部屋から出て行った。 「デエエエ!?メシがもらえなかったデスゥ!!」 ショックを受ける実装石。 「どうするんデスゥ!?今日のご飯ないデスゥ!ママ今日のご飯ないデスゥ」 「オマエタチのせいデス!!」 「オマエタチがバカニンゲンにご飯をヨウキュウしないからデスゥ!!」 「ごめんなさいレフー」 「潰さないでレフー」 実装石は一匹ウジを捕まえてガラスに叩きつけた。 「フン!ざまみろデスゥ!ママに逆らうからデスゥ」 動けるウジは一匹になった。 またニンゲンが世話しにやってきた。 「オラ!ニンゲンに餌をもらってこいデスゥ」 実装石はウジを急かす。 「レフー!レフー!ニンゲンさんご飯くださいレフー」 ニンゲンは気づかない。 「何をしてるんデスゥ!もっと媚びるんデスゥ!そんなんじゃご飯もらえないデスゥ!」 「ニンゲンさんご飯くださいレフー!!ウジチャン死んじゃうレフー!!」 痺れを切らした実装石はウジを抱き上げる。 「みるデスゥ!可愛いウジチャンデスゥ!」 「ワタシの可愛い可愛い仔がお腹を空かせているんデスゥ」 「ワタシの仔のためにメシを用意するデスゥ!早くしろデスゥ!バカニンゲン!!」 ニンゲンはようやく水槽に目を向けた。 「今なら可愛いワタシを愛でさせてやってもいいデスゥ」 「ほらサービスするデスゥ デスンデスン♪」 実装石はぽいっとウジ投げ捨て、寝転がりパンツを脱いでまたを開いて見せつけた。 思いっきり気分を害した顔のニンゲン。 水槽に近づくと寝転がる実装石の前髪を引っこ抜いた。 「デエエエエエエ!何をするデスゥ!?ワタシの美しい髪が!」 「前髪が無くなってしまったデスゥ!デエエエエエン!!」 顔を手で覆って泣き喚く実装石。ニンゲンは部屋から出て行った。 「デエエエエエン!ワタシの前髪が無くなってしまったデスゥ・・・」 「ママ・・・」 ウジは遠巻きに心配そうに母を見つめる。 実装石はただただ泣き続けた。 「お腹空いたレフ・・・」 今日も食べ物はもらえなかった。 数日間、実装石は泣き続けた。 それからしばらくして。 ウジはぐったりしていた。 ぐるるるるる・・・ 泣き疲れた実装石の腹の虫が鳴いた。 「お腹空いたデスゥ 何か食い物は無いんデスゥ」 見回すと4匹のウジの死骸と虫の息のウジ。 「仕方ないデスゥ これでも食べるデスゥ」 一つ死骸を口の中にほり込んだ。 くちゃくちゃくちゃ 「仕方ないデスゥ 他に食べる物がないんデスゥ」 「わりといけるデスゥ!もう一個いくデスゥ」 「おいしいデスゥ!もう一個デスゥ」 「あとひく旨さデスゥ!止まらないデスゥ」 「最後の一個デスゥ!味わって食べるデスゥ」 「おいしかったデスゥ 満腹デスゥ」 ウジの死骸を食べ尽くした実装石。 久しぶりに空腹を満たした実装石はころんとその場で寝転がった。 「ママがみんな食べちゃったレフ・・・怖いレフー」 ウジは水槽のガラスにへばりつくとゆっくり、少しずつ這って上がって行った。 「ふう・・・よく寝たデスゥ」 実装石は目覚めた。 そして、ガラスにへばり付き這いあがろうとしてる我が仔を見つける。 「オマエそんなところで何をしてるんデスゥ?」 ビクッ ウジは体を震わせたが気にせず歩みを進める。 「ママが聞いてるんデスゥ!答えるデスゥ」 「ママ怖いレフー!ママから逃げるんレフー」 「何をいってるんデスゥ?そんなところから降りるデスゥ」 「いやレフー!ママはウジチャンを食べちゃうつもりレフー」 「何をいってるんデスゥ!?バカなことをいってないて降りるデスゥ!!」 「食べないでレフー!!」 「うるさいデスゥ!メザワリデスゥ!早く降りてこいデスゥ!」 「怖いレフー!」 ドンドンドン!! ガラスを叩く実装石。 「早く降りてこいデスゥ!」 ドンドンドン!! 叩いてへばり付くウジを揺さぶる。 その時、丁度ニンゲンが部屋に入ってきた。 「ニンゲンさん助けてレフー!!ママに食べられちゃうレフー」 「何を言ってるんデスゥ!この仔は何か勘違いしてるデスゥ!」 デスゥウウン♪ 媚びながらもガラスを叩いてウジを揺さぶる実装石。 ニンゲンはじっと水槽をみている。 実装石はガラスを揺らし続ける 「助けてレフー!!ニンゲンさん!!もう限界レフー」 つるん!! へばりついていたウジはガラスから剥がれ落ちた。 剥がれ落ちたその先は実装石の口の中。 「ウプ!!ウププ!ゴクン!!」 実装石は我が仔を飲み込んでしまった。 「ああ!飲んじゃったデスゥ!ごちそうさまデスゥ!」 「でもこれは事故デスゥ 痛ましい事故だったんデスゥ」 「痛ましく美味しい事故だったんデスゥ・・・」 「ワタシは悪くないデスゥ・・・さあメシを用意するデス!ニンゲン!」 ニンゲンは静かに水槽に近づき、実装石を抱きかかえた。 そして、部屋から部屋へ。 初めて違う部屋へ移動する実装石。 「どこへ連れていくんデスゥ?レストランデスゥ?美味しいご飯デスゥ?」 「お服を買ってくれるデスゥ?ワタシはピンクのお服がいいデスゥ」 「ママの服も汚くなったデスゥ!新しくて綺麗な可愛い服にするデスゥ」 「そしたらまた可愛い仔供を産んでやるデスゥ」 「生まれた仔は特別に撫でさせてやってもいいデスゥ」 「特別デスゥ デプププ・・・」 ガラガラガラ・・・ 窓が開いた。 ニンゲンはベランダに実装石を連れてきた。 「お外デスゥ」 「今日は天気がいいデスゥ 寒いから早く閉めるデスゥ」 「聞いてるデス?ワタシの話を聞いてるデス? このバカニンゲン!!」 「デェ?」 ふわっ・・・・ スーーーーッ グチャ ニンゲンはベランダから実装石を落とした。 実装石は足から地面めり込む。 お腹の辺りまで潰れた。 「デギャアアアアアアアア!!」 「アンヨが!!ワタシの美しいアンヨがぐちゃぐちゃデスゥ!!」 「なんてことをしてくれやがったデスゥ!!痛いデスゥ!!」 「誰か助けてデスゥ!痛いデスゥ!!」 「ママ!」 「ママ!!助けてデスゥ!!ママー!!」 カラカラカラ・・・ 空から実装石にめがけて降ってくる。 カラカラカラ・・・ 朽ちて変わり果てた母実装の骸。 「ママー!?」 ベランダから外を見るニンゲン。 抱きかかえられた黒実装。 「ニンゲンさん怖いデスゥ!ワタシはあんな風になりたくないデスゥ!」 ニンゲンは優しく黒実装の頭を撫でた。 黒実装はニンゲンの胸に沈み込んで泣いた。 外にはお腹を空かせた野良実装石が群れが集まっていた。 ニンゲンは黒実装を抱いてベランダから部屋へ戻って行った。