顔が見えなきゃ大体は食えるってのが人間かもねー 調理して形がなくなりゃ何の肉だかわからに、そこから先は味と思い込みって話でして なにが言いたいかって? ああ、先日実装料理の店に行った後に新型の実装病が流行ってるって聞きましてね…ちと不安になっとるんですわ …なにせ、ほら、薬のおかげで進行は止まりましたが この通り、手から指が無くなって肉塊になってしまいまして あの時食ったの、本当にふつうの実装石だったのか、それとも?とね 上はずいぶんまえの自レスなのだけど、これをもとに一つ書いてみた。 悪趣味に走ってます。 文体が一部変なのはわざとです。意味なんてありません。 ずいぶん昔の作品の蔵出し品です。 これはまだここに出してなかったはずだ。 ---------- 皿の上には肉の薄切り、タレもかかって美しく光っている。 かつっと肉にフォークがささり、それを口に運ぶ者が居た。 「ああ、うまい。今回は当たりだねぇ。」 そういって顔をほころばす。 とてもうれしそうに、満足げに笑みを浮かべる。 「やぁ、やぁ。目が覚めたかい?」 男は行儀悪くフォークをこちらに向けてくる。 無意識に腕に視線が行くと、男の手はすっぽりと服に袖に包まれて隠されていた。 「おっと、不作法だったね。失礼失礼。」 そう言いながら男は次の肉を食む。 その態度そのものが不作法極まると思うのだが。 「なんだい?そんなに見つめて。眉間にもしわよせて。ああ、おなかが減ってるのかな?でもこれは僕のだ、あげないよ。」 男は本当にうまそうにそれを食う。 皿の上には肉以外に、飾りなのか赤と緑のつぶつぶがいくつか乗っている 肉はいったい何の肉なのだろうか?遠目には色そのものはそこらの肉となんら変わりはないように見える。 かつ、とフォークを刺し、男は肉を口に運ぶ。 肉片がうにゅんと身をよじり、フォークから抜け堕ちて逃げた。 「あっちゃー、いけないいけない。ひとつ無駄になっちゃった。」 指でつまみあげられた肉片は、うにうにと男の指から逃げようとしている。 「なんなら食べてみるかい?君なんかじゃなかなか味わえない代物だよ?」 男はうごめく奇妙な肉をこちらに向けて来た。 ずずいっと差し出された肉片は、埃やタレにまみれて苦悶の身もだえをしているように見えた。 少なくとも、私はこんな不気味な肉は食べようとなんてとてもじゃないが思えない。 「えー、要らないの?前の人は食べてくれたんだけどなぁ。つまんね。」 肉片を捨てて、男は食事を再開する。 じっと見ていると飾りの赤や緑の玉も食べている。 なんだ、あれも食える代物なのか?と、眺めてる内に一粒こちらにこぼれてきた。 赤いモノはきゅっと瞳孔をトじテ僕にぴんトをaわせてきた。 赤や緑は実装石の物と思しき眼球だった。 でも、僕の知ってる実装石の眼球は、えぐられてからも機能し続けるなんて代物じゃないはずだ。 ましてや、赤い眼は僕にピントを合わせたまま僕の目を見つめ続けている。 「ん、ああ、またやっちゃったか。どうにもこないだから不器用だね、僕。嫌になるよ。」 男はそういって赤い眼をつまんでゴミ箱に捨てた。 僕には目ノ前の男が、あの蠢く肉以上になにか得体のしれないナニカにしか思えな句なって鬼tあ。 「ん、なんだいなんだい?人をそんな目でじろじろ見てさ!?失礼だよ?」 男がひどく子供っぽく怒る。袖で手が隠れてるせいか、余計にひどく子供じみた仕草に見える。 不意に合ってしまった目を無意識に逸らした先には肉がまだ少しだけ残っていた。 「何?この肉が気になるのかい?」 男は僕の視線を勘違いしたのかそう問うてくる。 男がつつくととやはりうねうねと肉片が皿の上でのたくった。 「君は、これが何の肉だと思う?」 にこにこと、あいかわらず人を馬鹿にした顔で男が問うてきた。 言われて、じっと肉を見る。 うねうねぐねぐね、蠢いている。 肉にはよく見ると赤と緑のさしが入っている。 緑色、ということは、あの異常な生命力の肉は実装石のそれで間違いは無いのだろうが、実装石にしては赤色の配分が多いようにも見える。 『実装石か?』と声をあげようとした、が。 「ェェェ…?」 どうにもうまく声が出ない。そういえば、体も動かそうとしても動かない。 何故だ?何故? 「正解はね、君の肉さ。」 そう言うと。男はおもむろに僕の方に手を伸ばしてきた。 僕NO、肉?いや、そんな馬鹿な。そんな事をされたならば、普通すぐわかるはずだ。 「ほら証拠を見に行こう?」 ひょいと、僕は男に抱えあげられた。 b尾狗の体はそん名、抱えあげられる程小さいわけが亡いのに。 気のせいか、服の袖越しに触れる男の手のひらの感触も、骨が無いかのごとく頼りない。 男が僕を抱えて部屋の隅に行く。 そこには洗面台と、一枚の鏡があった。 「ほら、よく見てよ。ほら。」 鏡には男と、男に抱えられた 実装石とも人間とも区別のつかない奇妙な生首が映っていた。 「ほら。」 鏡の中の男が生首を右に向けると、僕の視界が左に移る。 「ほら。」 鏡の中で笑っている男が生首を左に向けると、僕の視界が右へと移った。 「ほら。」 鏡に映っている男が奇妙な生首を揺らす。すると僕の視界もおなじようにぐらぐらと揺れた。 思わズ叫んだ。裂けnだ。叫んだつもりだ た。 それでも僕の喉からは、僕の声は出ず 「 ェ  ァ       ァ  。」 奇妙な、空気の抜ける音ですらない。なんとも言い難い拍子抜けの音が漏れるばかり。 当たり前だ。肺も喉も無い。そもそも僕はもう僕では無いのだから。僕の体は変わり果てた上に、その9割方が僕の意思が届かないどこかに消えてしまった。 「君の肉は当たりだったよ。とても美味い。歯ごたえも、味の複雑さも絶妙だよ。」 ど故に消えた可hA、男が頼みもし無いのに悪びレもなく喋ってくれた。 僕の体は、鏡に映っている僕を抱えている男に美味しく頂かれてしまったのだろう。 「まだたっぷりあるから、じっくりと味あわさせてもらうね?美味しいお肉をありがとう。」 男は僕を毬でももてあそぶかのごとくもてあそぶ。 わざわざ目線をあわせて、とてもうれしそうにそう呟いてくる。 「何故こんなことをするんだ!何故僕をこんな目に合わせるんだ!」 叫べど当たり前のように声は出ない。 「ぇ ウ…   。 e ア   エ …  ぁ。」 声を出すのは諦めて、せめてもの意趣返しに男の目を睨みつけた。 「やだなぁ。みんなその目をするんだよね。最初の一人目の時はじっくりと味わおうとして、首と体を繋いだままにしてたもんだから、とってもうるさかったなぁ。」 男は僕の目を見ながら言う。顔には相変わらず笑みが張り付いている。 「まぁ、言いたい事は大体わかるよ。今までのお肉達もみんながみんな、最初に同じ目をしてたからね。」 男が僕の目の前に指を出す。その指がだんだん近づいてくる。 「実装石の肉ってさ、多分、君も聞いた事があると思うけど、実装石が苦しめば苦しむほど味が良くなるって話、聞いた事ないかな?」 男NO指が僕ノ眼窩に突き刺さった。畜生め!そっちの目はまだ人間のままだったのに! ぐじゅぐじゅと、男が僕の目をまさぐる。 「ェア  、 le ぁ   …   ア 。」 しばらく、部屋に響く音は、僕の眼窩がまさぐられる音と、僕の口から出る奇妙な気の抜けた音だけだった。 「そろそろかなー?」 そう言って、男が僕の眼窩から指を引き抜いた。 袖は真っ赤。そこには潰れてぐちゃぐちゃになった人間の目が握られていた。 男が人間の目玉を口に含む。 「うん、やっぱり、君は美味しいよ。」 男の顔は恍惚に震えている。 「ああ、本当に、君はなんでこんなに美味しいんだろう!」 「実装石が苦しむと味が良くなるってのはさ、恐怖で肉質が変わるだけじゃなくて、もうひとつ、ホルモンとか、脳内物質とかも関わるのさ。」 「長く生きて、いろいろ経験してきた奴ほど味は複雑になるみたいなんだよね。山実装が旨いってのはそういう事なのさ。養殖物とは生の密度がまるで違う。」 男がとたんに饒舌に語りだす。 そういえば、そもそもなぜこの男は僕を首だけとはいえ生かしているのだろう? 「それでさ、君は実装病って知ってるかい?ほら、人間が変わってしまうあれだよ、あれ。」 それは僕も知っている。昔流行ったけど、今はワクチンで、少なくとも先進国においては根絶された病気のはずだ。 「あれで変わった人間も実装石と同じように、その歩んできた人生で味が変わるのさ。」 「今まで食べて来た中じゃぁ君は4番目の旨さだよ。いったいどんな人生を歩んできたんだい?」 「まぁ、いいか。喋れないしさ?まぁそのまま話をつづけるよ。」 狂々愉々、男の口はめまぐるしく回る。何故僕にそんなに無駄話をふっかけるのだろう?それもじっくり言い聞かせるように。 「ところで、実装石の肉でどこが旨いか、て議論は食派じゃよくわかれる話題なんだけどさ?」 そう言って男が僕をなでる。正確には僕の側頭から後頭にかけてをやさしくなでる。 男の手はあいかわらず服に隠れて見えないが、妙にぶよぶよとした感触だ。 「僕は、実装石が生きたままの、脳みそが一番旨いと思うんだよね。」 …嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。 「君をそんな半端な形で肉をシめたのは、成りかけの肉の方が味が良いってのもあるけど、やっぱり美味しい部分をより多く食べるためなんだよねぇ。」 最悪だ!最悪だ!こいつは最悪の悪魔だ! 僕の体だけじゃ飽き足らず、こいつは僕の脳味噌まで食おうとしてやがる! 「ああ、良い表情をしている。きっと君が今抱いているその感情は、君の脳をより美味しくしてくれているだろうね。」 誰か!助けてくれ!死にたくない!死にたくないんだ!こんなところで食われて終わるのなんて嫌だ! 「、ェェ   ェ ェ、ェ 。    ア   アアア  ァァァア 。、、」 「さて、現状確認も済んだところで、お楽しみにとっておいた物を食べようか。もちろん、君の事だけどね。」 「きっと、君の今までの人生も、今抱いている恐怖も、君の脳をとても美味しくしてくれていると思うんだ。」 「なにせ、脳ってのはそれまで生きてきた事をすべてその中に積み上げているんだから。」 「さてと、それじゃぁ。」 「いただきます。」 「ごちそうさまでした。」