俺は「」。バイトで食いつなぎ、週末は公園で憂さを晴らす社会の底辺だ。  閉塞した現状、焦りだけは募る。  何かこのくそったれな今を打破するために色々考えては試すが続かない。 「くそが!」 「デボァ!?」「テチャー!?」「レチュアー!」「レフーン、レビュッ!」  バイトの帰りに何んとなしに寄った公園で媚びてきた実装石を蹴り飛ばす。子供を掲げていた親実装は脇腹を蹴られて子供を放り出し、さらに小さい親指実装は逃げ惑い腹を見せていた蛆実装を踏み潰した。  俺自身実装石全てが憎いわけでは無いが、こいつらの為に一々身辺調査して糞蟲かどうか判別してやるほど暇ではない。 「続いているのはこんな事くらいか」  そう、虐待だ。ハマったのは元々増えやすいデタラメナマモノを地域ボランティアで駆除したのが始まりだったか。俺は憂さが晴らせて楽しい。その上褒められる。その後掃除しなきゃならないのが面倒と言えば面倒だが、そこも仕方がない。俺は分別の付く人間なのだ。こいつらとは違う。  結局のところこんな事に熱中して今こんな状態なんだけどな。  憂さ晴らしに来たのに鬱になりかける精神をなんとかなだめるために逆転の発想とやらを考えてみる。 「一応こんな糞蟲だろうが需要はあるんだ……そうだ!」  ブツブツと独り言をこぼす中年男と言う絵面だろうが定期的な間引きが認められているこの地域でこんなものは割とよくある光景だ。むしろ最近は俺のような底辺が暴発しないための受け皿と言う認識すらある。そんな事はどうでも良い。 「デ、デデッ!?」「テッチュウ♪」「レチャー!?」  俺はさっき蹴りを入れた実装親子を処分用のゴミ袋に入れた。片付けが面倒だったから潰してなかったが、予定変更、元手ゼロの実験材料。駄目で元々だ。 ----------------------------------------------------------------------------  糞蟲親子を入れた袋を持って家に帰ってきた。具体的にはアパートのゴミ捨て場だが。 「ようこそ実装ちゃん達。ここが君たちのおうちだよ」  そう言いながら袋の口を緩め、逆さにして中身を出す。完全に開けると投糞されたりするからな。 「デギャッ!?」「チャー!」「ヂッ!」  頭をしたたかに打ち付けた実装親子が抗議の鳴き声を上げる。運の悪い親指実装が親実装の下敷きになり赤緑のまだらな染みと化したがが構わずリンガルを起動した。 「人間! 高貴なワタシになんて仕打ちをするデス! ぶん殴ってやるから頭を下げるデス!」「ママぁ! イモウトチャが!」  ポケットから実装ネムリを出す。 「デッ! それをよこすデス!」「よこすテチー!」  途端に態度が変わった。知能は平均的かな。実装石にしてはだが。 「うんうん、君たちはこれからきれいにして飼い実装にしてあげるからね。洗ってあげるから服を脱いで。上手くできたらこれあげるからね」 「ニンゲンワタシに発情したデス? しょうがないデスねぇ♪」「親子丼テチュ? ケダモノテチィ♪」  ナマモノどもがシナを作りながら袋で持ち運んだ時に漏らしたであろう糞まみれな実装服とパンツを脱いだ。かなりイラっと来る。食欲と性欲が旺盛っと。期待は出来ないな。 「よしよし、よくできたね。どうぞ」  そう言いながらネムリを数粒放ってやる。 「全部ワタシのものデスァ!」「チベッ! テェェー!?」  親糞蟲が子糞蟲の頭をぶん殴ってネムリを独り占めしだした。たるんだ肉を震わせながら親糞蟲は四つん這いになってネムリを拾い集めている。 「はいはい、子蟲ちゃんにはこっちをあげるからね」  まだ残っているネムリを放ってやる。 「ニンゲンありがとテチ!」  お礼が言えるから母体は子蟲の方が良いか? と考えながらも糞蟲どもが静かになったので髪を毟り取って低圧ドドンパで糞抜きをしてゴミ捨て場に備え付けられている水道で大雑把に洗い流す。  本物の虐待師は金平糖も無しに自発的に禿裸にさえて糞蟲どもに洗わせるんだけど俺もまだまだだな。とか考えながらあらかた洗い終わったら糞蟲親子の腕をつかんで家の中へ招待だ。  部屋に着いた俺は虐待用に使っている部屋にこの2匹を放り出し、ベニヤ板、釘、金づち、ライター、カッター、ホッチキスと。とりあえずはこれでいいか。  追加で麻酔代わりの酒を漏斗でを糞蟲親子の口から流し込み、スマホのサーチャーで偽石の場所を調べてカッターで取り出す。取り出した偽石はそれぞれ酒の残りに砂糖を入れてよく振り入れておく。  そしてカッターをライターで熱して鳴き声を出させないよう喉を割いて潰す。やりすぎると餌やりに手間がかかるから程々に。切り口はホッチキスで留めておく。  後はベニヤ板に釘で四肢を打ち付けて固定。終わったらスマホからアプリをダウンロードする。ほかの道具は後ででいいか。 ----------------------------------------------------------  ワタシはジョセフィーヌ、ママが元飼いのエリート実装デス。  今日は託児予定でニンゲンに近づいたのデスが何も悪いことしてないのに蹴られたデスゥ……。その時に親指ちゃんと非常食の蛆ちゃんがカナシイことになったけどコンペイトウが食べられたのでチャラにしたデスゥ♪  そうしたら眠くなって口の中のアマアマと相まってシアワセな気分でうたたねしてたら……なんでこんな事になったデスゥ……。 「起きろ」 「デギャッ!」「チベッ!」  頭を殴られて起きたらワタシは裸で磔にされていた。手足は釘で固定され、喉は焼き潰されていた。唯一自由な首を動かし、横を見ると我が仔も同じような状態だった。 「ようこそ、今日からここが君たちのおうちだよ」  コンペイトウを献上させたニンゲンが何かしゃべっている。力いっぱい叫びたかったが出るのは「ヘヒュー!」と言う息だけだった。 「これから君たちはちょっとした実験に付き合ってもらう。親指ちゃんと蛆ちゃんは知っているだろう? そう、君の可愛かったあの仔達だ。君とそこのお姉ちゃんどちらにしようか迷ったんだけどね。どっちか片方にはごはん用、もう片方には実験用の仔を産んでもらうからそのつもりでね」  ふざけるなデス! 今すぐワタシを自由にしてステーキとコンペイトウをよこすデスニンゲン! そう叫びたかったけど声が出ない。 「活きが良いねぇ。しかしどうしたもんか……強制妊娠はいいけど胎教するから親蟲だと親指よりは仔実装サイズが多そうだしなぁ。そっちの子蟲でいいか。仔食いさせておけばしばらく保つだろ」  横の仔が口を目を見開いてパクパクしているデス。どうしてこんな事になったデスゥ……? -------------------------------------------------------------  改めて自己紹介しよう。俺は「」。実験派よりの虐待派だ。  今回の実験は丈夫で賢い親指と蛆実装を量産する事だ。  両方ともとても儚い。それに加えカラーひよこ並みの値段で売られているがそれすらも割に合わないレベルで死ぬ。蛆実装なんかはマンボウ以下の儚さだ。  食用実装なんかはこのレベルを改善したが知能面は考慮されておらず、あくまで食用の基準を超えるものはなかなかお目にかかれない。いちいち調理前にリンガル起動して調べるのも手間だしな。発覚してもすでに鍋の中だったりする。  ペット用の親指と蛆はあらかじめ偽石をコーティングされていたりもするが、そうなるとその分コスト面が余分にかかるわけだ。何よりコーティングしていると言う事実が逆に萎えると言う意見もある。  俺がやろうとしているのはその隙間産業、知能面と肉体面の両立だが、まあ稀に蛆のくせにやたら知能が高い奴とかいるので何とかなるかも知れない。ならないかも知れないが駄目で元々と思い実験する事にした。  方法が確立したら特許取るなりさらに効率化するなりして飯のタネにしたいがそこは取らぬ狸のなんとやら。こいつらでストレス解消している間はしばらくは楽しめる。  さあ、楽しい楽しい飼い実装生活だ。おめでとう実装ちゃんたち!