飛べ!実装の大空へ! 俺の名はとしあき。 鳥実装コンテストという大会の観戦にやって来た。 要するに人力飛行機を作って飛距離を競う某番組の実装石版だ。 人間は飛行機製作やパイロットとなる実装石の捕獲を行い、本番での飛び出し、飛行諸々は全て実装石が行うようになっている。 木材や発泡スチロールで作った飛行機に、パイロットの実装石(成体)が乗り、高さ10mのプラットホームから飛び立つ、というものだ。 某番組であれば自転車のようにパイロットが足でペダルを漕いでプロペラを回すが、実装石は足が短すぎるので両手を使って ビ○ーズブートキャンプよろしく腕を前後にぐるぐる回し、ペダルを回す。 ペダルを回すことでチェーンやシャフトに動力が伝わり、プロペラが回る、という構造になっている。 当然、これでは操縦ができない。そこで仔実装2匹を搭載することが認められている。 2匹の仔実装は上下、左右それぞれの操縦を担当し、パイロット実装の「右デス!上デス!」というかけ声に応じて ワイヤーを操作、舵を操る仕組みだ。 飛行機は飛び出した後、カメラを搭載したドローンがついていき、飛行の様子を撮影する。一番遠くまで行った飛行機の優勝だ。 さらに、成体実装パイロット、操縦担当仔実装の様子は機体内部に付けられたリンガル機能付きオンボードカメラによって撮影され、 ドローンの映像とともに観客席前に用意された大型スクリーンに中継される。 真夏の太陽の下、観客は酒やつまみを楽しみながら、パブリックビューイングのように大会を楽しむのだ。 さらに、プラットホームから飛行機を押し出す役割として、実装石3匹の参加が認められている。 彼らは地上からプラットホームまで機体を運び、飛び出し時には右翼、左翼、飛行機の後ろ側をそれぞれ押し、飛行機を発進させる役割である。 見れば見るほど某番組にそっくりな競技大会であるが、大きく違いのは一点。 人間の場合は湖で行うところ、鳥実装コンテストの場合はプラットホームの真下から遥か彼方まで、打ちっぱなしのコンクリになっていることだ。 今年の大会を観戦する前に、昨年の大会の概要を振り返ろうと思う。 ========鳥実装コンテスト2016======== ■1チーム目:双葉大学鳥実装部 「3、2、1、GOデスゥ!!」 機体の発進と共に成体実装パイロットは尻を高らかに上に向け、ドドンパを食べた。 噴出される膨大な糞によるロケットスタートという捨て身の作戦に出たのだ。 だが総排泄口の向きが上過ぎたため、機体は真っ逆さまにコンクリ地面に落ち、成体実装パイロットは操縦担当の仔実装とともに赤緑の染みとなった。 解説者曰く「ドドンパしなけりゃ普通に飛んでたでしょうね」とのこと。残念。 飛距離:14m ■2チーム目:漏善株式会社鳥実装同好会 社会人チームらしい。見事飛行に成功し、順調に距離を進めている。 成体実装パイロット、操縦担当の仔実装ともによく調教されているらしく、オンボードカメラの映像からも 「デスッ!デスッ!デスッ!」としっかり漕いでいる様子が分かる。 これはロングフライトかなぁと思っていたところ、成体実装パイロットが突然左を見て、「デデッ!?」と驚いていた。 何と鳥が飛行機の隣を並行して飛んでいるではないか。鳥はトンビか何か、大型の鳥類だ。明らかに成体実装パイロットを餌として凝視している。 実装石は本能的に捕食者である鳥を恐れるため、成体実装パイロットは汗に加えて両目から赤緑の涙を流しながら漕いでいる。 「デスーッ!負けるわけにはいかんのデスッ!!ここで耐えて優勝すればワタシも長女次女も、家族みんな飼い実装になれるデスウウウウ!!」 「長女!右に舵をきるデスゥ!次女!少し上昇デスゥ!」 「ママー!わかったテチィ!」「了解テチィ!」 どうやら操縦は自分の仔にさせ、優勝すれば家族ともども飼い実装になる、ということになっているらしい。 まさに親子愛の結晶フライトだ。素晴らしい。思わず拍手を送りそうになったところ、成体実装パイロットは鳥にさらわれた。 「デ、デスウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!家族の夢がああああああああ!!!!!」 「ママーーーーーーーーー!!!!!!」 パイロットを失った飛行機は、徐々に高度を下げていき、コンクリの地面に墜落した。 仔実装二匹も飛行機の下敷きとなり、赤緑の液体をぶちまけた。成体実装パイロットは虚空の彼方へ消えていった。 飛距離:200m ■3チーム目:双葉獣医大学「」研究室チーム 実装石の住みよい環境を研究している大学教授の研究室らしい。 なんでもコックピットの形状が実装石にとって苦労なく漕げる設計になっているとか。 「3、2、1、スタートデスゥ!!」 飛び出す。おおっ飛んだ。 成体実装パイロットは確かに汗もほとんどかかず漕いでいる。さすが学者の考えることは違う。 一方、操縦担当の仔実装の様子をオンボードカメラの映像で見ると、熱中症になっていた。 どうやら操縦担当のいる区画はコクピットから完全に閉鎖されているらしい。2匹とも太陽熱で伸びていた。 やっぱり学者の考えることは分からん。 「デスッ!右から風がきたデスゥ!機首を右に少しふるデスゥ!!!」 「・・・・・・・・・・」 操縦担当から返事がない。2匹とも伸びているので当然だが。 「デッ!?どうしたデスゥ!!早く舵をきれデスゥ!デデデッ!向かい風デスゥ!機首が上を向き始めたデスゥ!下降にきり舵デスゥ!!!!!」 飛行機がどんどん上を向き始める。すると、仔実装が滑り台を滑るように、飛行機の後ろ側に滑り始めた。 仔実装2匹ぶんの重量が飛行機の後ろ側に行き、さらに飛行機が上を向く。 「デッスゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!落ちるデスゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」 飛行機は失速、ほとんどひっくり返るような形でコンクリ地面に落ちていった。偶然、そのときの成体実装パイロットの顔をドローンのカメラが捕らえていた。 何が起きたか分からないが、これから何が起きるか、自分がどうなるか、絶望と悔しさと腹立たしさに支配された顔を見せてくれた。 飛距離:120m ■4チーム目:JUN工科大学実装同好会 学生チームだが、鳥実装コンテストの出場を目的としているのではなく、所謂「虐待派」のサークルらしい。 プロペラの両端に成体実装パイロットの仔を縛り付けている。規定上、仔実装の搭載は2匹までなので、操縦担当を載せられないが、虐待目的なのでこれで良いらしい。 優勝したら仔実装を解放する約束なのだそうだ。 「デスゥゥゥゥ・・・ニンゲンは悪魔デスゥ・・・・あのとき公園でコンペイトウに騙されなければ・・・」 などと言っているが、とりあえずプロペラを回さないことには始まらない。 「長女、次女、少しだけガマンするデス」 「テチー、ワタチたちどうなるテチィ?」「おい、バカ親!はやく縄をほどけテチ!ワタチでSMプレイは100年早いテチ!」 成体実装パイロットが赤緑の涙を流し、ペダルを漕ぎ始める。 「テチャアアアアアアアアアア!!!!!!頭が、オメメが、体が吹き飛ぶテチイイイイイイイイ!!!!!!」 「テチャアアアアアアアアアアア!!!!!!いきなり水車責めとかハイレベルテチイイイイイイ!!!!」 仔実装の絶叫とともに、飛行機は飛び出した。だが仔実装はなかなか死なない。偽石を瞬間接着剤で補強して栄養ドリンクと一緒にしているらしい。 すると、ある現象が起きた。仔実装たちは鼻血を出して悶絶しているが、鼻血が遠心力で目に入っているらしい。 強制出産モードに入る仔実装たち。飛行機はプロペラの両端から仔実装の悲鳴と大量の蛆ちゃんをまき散らし、まさに阿鼻叫喚のごとく飛んで行った。 100mも飛んだころには、仔実装は2匹ともミイラになっていた。 「デスゥ・・・仔も死んでしまったデスゥ・・・ワタシはもうオシマイデスゥ・・・」 生きる気力を失った成体実装パイロット、ペダルを漕ぐのをやめ、赤緑の涙を流しながら墜落していった。 ちなみに飛距離だが、機体を押し出した際に、押し出し係の実装石一匹が足を滑らせてプラットホームから落ちて死んだため、大会規定に則り記録は無効となった。 飛距離:記録なし(押し出し係落下のため) ■5チーム目:チームJISSOU 勢いよく飛び出したところ、突然飛行機が右旋回を始めた。あわや観客席に、と思ったが、そのまま右旋回を続け、あろうことか地上とプラットホームとを繋ぐ桟橋へ向かい始める。 「ヤバイデスゥ!ヤバイデスゥ!ヤバイデスゥ!」 完全にパニックになる成体実装パイロット。どうやら発進時に強力な左風に押され、そのまま操縦不能(というか成体実装パイロットが操縦の指示出しを忘れた)になったらしい。 桟橋には次に飛行する飛行機(6チーム目「チームTECHI☆TECHI☆」)が待機中である。 「デエエエエエ!!!!こっちくんなデスウウウウウウゥゥゥゥ!!!!!」 見事に衝突。衝突した飛行機に乗っていた実装は3匹とも飛行機の中で圧死。一方衝突された方も飛行機に乗っている3匹の実装に加えて、機体を保持、運搬していた 3匹の実装石まで衝突してきた飛行機の破片の直撃を受け、なんと6チーム目「チームTECHI☆TECHI☆」は飛び出す前にメンバーの実装石全員が死亡するという結果となった。 飛距離:記録なし ■6チーム目:チームTECHI☆TECHI☆ チームJISSOUとの衝突事故により、チームメンバー全員死亡。 飛距離:記録なし ■7チーム目:槐大学鳥実装サークル 優勝候補らしい。 このチームも、成体実装パイロット、操縦仔実装とも、優勝すれば飼い実装になることが約束されているそうだ。 危なげなく、順調に飛行する。成体実装パイロットの漕ぎっぷりも気合いバッチリだ。 「デスッ!デスッ!デスッ!デスッ!まだ行けるデスゥ!ワタシのジツセイは晴れ時々大荒れデッスゥゥゥゥゥゥ!!!」 なんと1kmも飛び、大フライトを見せた。しかも他チームと違い、着陸にも成功している。優勝候補のチームだけあって、さすがだ。 無事着陸した飛行機から、仔実装と、成体実装パイロットが出てくる。しかしここで問題が。 真夏のコンクリの地面は、実装石には耐えられないほどの熱さなのだ。先に降りた仔実装2匹はあまりの暑さに足を交互に上げながら 不細工な踊りを披露するが、やがてパキン死した。それを見た成体実装パイロット、とりあえず主翼の上にのぼり、上空を飛行するドローンを見つめる。 「デー・・・、デスゥ♪」 成体実装パイロット、懇親の媚。しかし無常にも、ドローンはバッテリー交換のため成体実装パイロットを見捨ててプラットホームへ帰って行った。 「デッスウウウウウウゥゥゥゥ!!!!!」 成体実装パイロットの悲鳴はどこまでも聞こえた・・・ 飛距離:1000m ■8チーム目:ラプラス大学鳥実装研究会 去年優勝したチームだそうだ。驚くべきは、成体実装パイロットはなんと2度目の出場だそうだ。つまり去年この大会に出て、生き残った実装石がいるのだ、 このチームも、先のチームと同様順調に飛行を続ける。1kmのところに先ほどのチームの飛行機が残っていて、成体実装パイロットは主翼の上で干からびていた。 飛行を続け、1.2kmのところで力尽き、着陸した。 「デ、デスー、やったデスゥ、2連覇デスゥ!!!」 「ママーやったテチィ!ワタシもイモウトチャも頑張ったテチィ!」 このチームは親子で操縦していたようだ。 「デスゥ、おまえたちは自慢の娘デスゥ」 そういって機体から出ようとする成体実装パイロット。しかし、灼熱のコンクリ地面をどうするのか? 「「テヂャ!テヤアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」」 なんと成体実装パイロット、仔実装2匹の顔を灼熱コンクリに押し付け始めた。焼けただれる2匹の仔。 成体実装パイロットは自分の両足に火傷で瀕死になった仔を括り付け、靴の代わりにしてコンクリの地面に降り立った。 「デプププププププ。去年の優勝で飼い実装、今年の優勝でゴージャスな飼い実装にランクアップデスゥ♪」 「仔を使ってプラットホームまで帰るなんて、ワタシはやっぱり天才デスゥ♪」 この成体実装パイロット、知力、体力ともに相当なものらしい。そしてイザとなれば仔を捨てる根性。うーん、なかなかすごい試合だ。 「デププププ。さて、娘たちが擦り切れる前に帰るデスゥ」 「デッス、デッス、デッス」 成体実装パイロットは軽やかに走り出す。足を前に出すたびにデスデス鳴くのが不快だが、こいつは大した奴だ。 しかし 「デギャアアアアアアアアア!!!!!」 2チーム目を襲ったあの鳥が、成体実装パイロットを捕らえた。仔実装の血の匂い、焼けた肉の匂いにひかれ、次々と大型鳥類が姿を現す。 「や、やめろデスゥゥゥゥ!!!!ワタシには、ワタシにはこれからシアワセがまっているんデスゥゥゥゥデギャアアアアアアアアア!!!!」 成体実装パイロットは空中高く放り投げられ、次々と体中のいたるところを食われていった。もはや灼熱コンクリを避けるかとかいう話ではない。 しかし、無慈悲なドローンはその様子もしっかり撮影、体中が食われていく様を我々の前の大型スクリーンに届けてくれた。 飛距離:1200m こうして、8チーム目ラプラス大学鳥実装研究会が優勝した。 おめでとう!そして感動をありがとう! 以上が鳥実装コンテストの概要である。今年の夏も、某所で開催される。俺としては是非、観戦をオススメしたい。