マタニティ・ブルーと実装石(2/2) 「」 06/10/29(日)05:17:17 No.3193[返信]
やがて、実装石のお腹は、もぞもぞと動きながら、どんどん盛り上がってきた。「デギャァァアァ!」出産の痛みに絶叫する実装石。「頑張れ!もうすぐ生まれるぞ!」僕たちは、腕を押さえつけたまま、激しく悶絶する実装石を励まし続けた。
メキメキと実装石のお腹が破れ、服が内側から引き裂かれてゆく。口の端からは血が溢れる。そして、ついに赤ちゃんがお腹の中から顔を出した。
「ルトルトー!」赤ちゃんは、この世に生まれ落ちて最初の鳴き声を、喜びいっぱいに上げると、背中の羽を広げてパタパタと飛び立った。そして、しばらくの間、親となった実装石の上をくるくる回っていたが、やがて遠くに飛び去ってしまった。
「よく頑張ったな、えらいぞ。」僕は、残された実装石に声をかけたが、返事はなかった。出産で力を使い果たしてしまったのだろう、既に事切れていた。世代を継ぐため、命を賭けて子を産みきった実装石に、胸が熱くなった僕は、思わずぽろぽろと涙をこぼしていた。タケシは、そんな僕の肩に手を置いて、「この実装石だって、元気な赤ちゃんが生まれて、きっと本望だったさ。」と慰めるようにつぶやいた。 (了)